さよなら、愛しき日々よ

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 別れが人を強くさせるよ。なんて、どこかで聞いたことのあるようなセリフを言ってくるやつもいるけれど、そんなことで強くなるというのなら俺は弱いままでもいい。子どものままでもいい。大人になんてなりたくない。だって、大人になるということは――。  大人? 「あ、スーツか」 「やっと思い出したか」 「完全に忘れてたわ。そういえばあれ、寮監から借りたんだっけ」 「一張羅だって言ってたから、ちゃんと返しとけよ」  どこにやったかな、とクローゼットを開けると押し込められるようにしてスーツが入っていた。ぐしゃぐしゃになったスーツを取り出すと、俺はあの日のことを思い出していた。優斗の父親と会ったあの日のことを。 「あの時は、悪かったな」 「……お前が悪いんじゃないだろ。謝るなよ」 「いや、ああなるってわかってたのに――。お前を連れて行った俺が悪い」 「そんな……」  それ以上は、言わせてもらえなかった。  俺の口を塞ぐようにして、優斗は唇を重ねた。次第に深くなる口づけに、俺は何も言えなくなった。  俺は優斗に抱かれながら、胸糞悪くなるような最低な日のことを思い出していた。
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