さよなら、愛しき日々よ

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 ――あの日のことは、よく覚えている。  言いにくそうに優斗が「父親と会うのに、ついてきてほしい」と俺に言ったのだ。優斗が折れに頼みごとをするのなんて珍しくて、俺は二つ返事で引き受けた。  それがあんなことになるなんて、思いもせずに……。  優斗の父親は俺でも聞いたことのあるような大企業の次期社長で、優斗もその後を継ぐのだと、わざわざ外出許可を取って行ったホテルのロビーにあるカフェであの人は語っていた。  卒業後の進路を迷っていると言った優斗を鼻で笑うと「アメリカの大学に籍を用意させている」と優斗の意思なんて関係ないかのようにあの人は言った。そして……。 「どういう関係かは聞かないでおいてやる。まあ、卒業後は住む世界が変わるんだ。せいぜい今のうちに仲良くしておくといい」 「え……」  俺を一瞥すると、あの人は眉間に皺を寄せてそう言ったのだった。その言葉に、背中に嫌な汗をかくのを感じた。  そして……俺をまるで虫けらでも――いや、娼婦か何かを見るような目で俺を見て、あの人は下卑た笑みを浮かべた。 「それとも、愛人として囲うか? そういう相手と話すこともあるだろうし、話のネタにはなるかもしれんな」     
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