さよなら、愛しき日々よ

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「なっ……!」  その後のことは思い出したくもない。  殴りかかろうとする優斗を宥めてへらへらと笑いながら、その場をあとにした。  帰る道すがら、優斗は何度も謝ると俺を連れて行ったわけを話しはじめた。 「親父の秘書がどうも俺と達也の関係をかぎつけたようで、親父に報告をしたらしいんだ。余計なことを言ってくれたおかげで、達也のことを連れて来いって言われて……それで……。でも、あんな酷いことを言うなんて思ってもみなかった。本当にごめん……」 「いや……まあ、なあ。しょうがねえよ」 「しょうがなくなんてないだろ……! だって……!」  普段は俺より大人びていて、落ち着いている優斗があんなふうに子どもみたいな声をあげるのを俺は初めて見た。  結局、俺たちは子どもなんだ。  今はこうやって学校という箱庭の中にいるから自由に出来ているけれど、そんなのまやかしでしかなくて。外に一歩出れば親の庇護下に置かれてしまう。 「くそっ……」 「……帰ろうか」 「達也……」 「卒業まで、まだあと半年はある。だから……」 「ああ……」  優斗の手を握りしめると、俺たちは学校までの道のりを歩いた。普段はバスを使う道のりも、ただただ無言で歩き続けた。     
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