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呻くように息を吐くと、俺の中で果てた優斗がけだるそうに隣に寝そべった。
半年もある、なんて思っていたのに時が過ぎるのはあっという間で、明日にはこの寮を、そしてこの学校を卒業する。
まだもっとそばにいたいのに、終わりはすぐそこに迫っている。
目を瞑る優斗の頬に手を伸ばすと、俺を見ずに優斗は小さく呟いた。
「卒業したくねえな」
その言葉に、抑えきれない感情が溢れてくる。
でも、それを言ったところでどうなる。何が変わる。俺たちは――。
「なあ、ここで終わりにしようか」
「え……?」
「お前のいない明日なんて、俺はいらない。だから……」
「優斗……」
優斗の表情は真剣そのものだった。どういう意味か、なんて聞かなくてもわかる。きっとここで俺が頷いたら、なんの迷いもなく優斗は命を絶つだろう。
そういうやつなんだ、こいつは。
大人びているくせに、こうと決めたら絶対に譲らない。
なら……。
「いいよ」
俺の言葉に、一瞬驚いたような顔をした後で、優斗は微笑んだ。
「これで、お別れだ」
頬に触れていた手を首へとかける。
俺に全てを委ねるかのように、優斗は目を閉じだ。
唇にキスを落とす。そして、俺は口を開いた。
「大人になろう」
「大人に?」
「ああ、いつかこの日々が楽しかったって思えるように、大人になろう。それまでお別れだ」
「それが、お前の答えか」
優斗の声が震えていて、泣いているんじゃないかと思った。
でも、その頬にもう手は伸ばさない。
その代り俺は、優斗に別れの言葉を告げた。
「愛していたよ」
「俺も、愛していたよ」
愛しているとはもう言わない。
もう、言えない。
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