私の好きな人

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 それは、あたしが入社してから二ヶ月か三ヶ月ぐらいのこと。あたしが仕事をしていると、経理のお局様が「書類がない!」と騒ぎだしたのです。どうも重要書類だったらしく、隣の席のあたしも一緒になって探したり、翔子先輩や同じ部署内の人をも巻き込んで探しましたが、なかなか見つかりません。挙句の果てに、お局様は何を思ったのか、 「わかった。あんたが盗んだんでしょ! どこに隠したか言いなさいよ! この泥棒猫!」  なんて怒鳴り散らしてきたのです。あたしは隣の席の書類なんか触った覚えが無いので、完全に濡れ衣です。皆が、あたしをじっと見ているのがわかります。 「あ、あたし、そんなこと、してません……」  他にも「男性社員に色目つかってる」だの何だの酷いことを言われ、泣きそうになっていると、 「ちょっと、いい加減にしてください!」  そう怒鳴ったのは翔子先輩でした。 「雨宮さんが盗んだって証拠はあるんですか? 無いんですよね? だったらなんで、そんなこと言うんですか! 憶測で物を言わないでください!」  なおもあたしを非難するお局様を翔子先輩はひたすらかばって守ってくれました。  それから部長に翔子先輩と一緒に呼び出されて事情聴取されたときも「雨宮さんは何も悪くない」と明確な理由を述べて私の味方でいてくれましたし、 「美味しい物食べてお酒飲んで、嫌なこと忘れちゃいましょ? よかったら、この後飲みに行かない? 大丈夫。私がおごるから。それに明日会社行きづらかったら、休んでもいいのよ」     
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