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そのとき行った店の喧騒と共に、同期の非難するような声を今でもはっきり思い出せる。
『あの子はそんなことするような子じゃない! 彼氏だっていて、今のところ仲良くやってるし。それに、私が好きな人を盗ってるならともかく、私がフった人なんでしょ? 別に、私が好きじゃない人が香純ちゃんとどうこうしようと関係ないじゃない!』
腸が煮えくり返りそうな怒りの中、私は同僚に八つ当たりするようにして香純ちゃんの噂を否定した。好きな人が陰でみんなから悪口を言われているのが許せなかったのもあるが、つい香純ちゃんが男とベッドでどうこうしているのを想像してしまい、嫉妬心で気が狂いそうになったからだ。嫉妬心はもちろん、相手の男へ対するものだ。
正直言って香純ちゃんの彼氏にすら「私なら彼女のことを大切にして、こんな愚痴なんか言わせないのに」と思い、二人が別れることを呪いのように願っている私だ。
実際に香純ちゃんが浮気したとは考えていないが、男というだけで香純ちゃんに選ばれる可能性があり、私が知らない彼女の一面を見ることができるかと思うと……、ああ、想像しただけで腹が立つ。
「翔子先輩、もしかして、怒ってます? あたしが好奇心でついプライベートのことを訊いたから……」
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