【R18】飼い猫になります(チェルル)

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 チェルルの葛藤など素知らぬ様子で、シウスが屋敷のドアを叩いてすぐにドアが開いてしまう。  前日に通達はしてあったから、エントランスに皆が並んで立っていた。  先頭に立って扉を潜ったアルブレヒトを見て、皆が暫く言葉もなく立ち尽くしていた。それもわからないわけじゃない。現実味がなくて、都合のいい夢を見ている感覚だと思う。チェルルだって、そんな感じだった。  生きているかもわからない。どこにいるかもわからない。そんな時間が五年も続いたら、全員一度は「もう死んでいるかも」なんて考えたに違いない。  その人が、目の前に立っているのだから。  それでも真っ先に我慢できなくなった奴が飛び出した。声を上げて大泣きしながらアルブレヒトに駆け寄るハクインを、アルブレヒトがとても優しく抱きとめている。幼子にするみたいに優しく撫でて、背中も撫でて。腕の中でわんわんと泣くハクインに微笑んでいる。 「アルブレヒト様! アルブレヒトさまぁ!!」 「ただいま、ハクイン。心配をかけてしまいましたね」 「あるぶれびどざまぁぁ!」  精神的には一番素直で幼い故の事だ。あまりに泣くから引きつけ起こしそうになって、鼻水と涙でぐしゃぐしゃで。そんなハクインに微笑んで頭を撫で、ハンカチで鼻をかんであげたアルブレヒトは怒りもしない。     
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