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【R18】飼い猫になります(チェルル)
王都に戻ってきて翌日、シウス、アルブレヒトと一緒に馬車に乗り込んだチェルルは何とも言えない空気に窒息しそうだった。
シウスは黙っている。これはあまり問題ない。二人きりで会話なんてどうしていいかだし、下手に話しかけられても反応に困る。
けれどアルブレヒトだ。ニコニコとしているけれど、気配はどこか鋭い。何か企んでいるか、思うところがあるのか。
「のぉ、チェルル」
「なに、宰相さん」
「ハムレットの奴は、兄に何かしたのかえ?」
とても小さな声で問いかけられるが、それこそチェルルはわからない。アルブレヒトにハムレットについて何かを問われた事はないのだ。
けれどアルブレヒトは人に見えないものを見る。なにか、気にくわないものがあるのだろうか。
そうしているうちに馬車はハムレットの屋敷の前に辿り着いてしまった。
見上げると、とても懐かしい。ここで過ごした時間をありありと思い出す。
途端に、会いたくなった。でも、会ってくれるだろうか。思わず首輪をギュッと握る。お別れもしないくらいだったから、少し不安で苦しい。嫌われていたら、どうしよう……。
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