ビー玉と飴玉

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ビー玉と飴玉

 顧問をするようになってわかったが、演劇部には大抵計画性というものがない。3年続けて、文化祭1週間前に台本が完成していないという有様である。それを避けるために、戯曲、既成台本の中から彼女たちに向いているものを探そうとするのだが、確実に最後まで読めない。かくして今年も、危うい状態のまま部活が続いている。そして、ぼくも帰れない日々が続いている。ただ、ぼくが帰れない理由はそれだけではないけれど。  「高木先生、お疲れ様です。これでもどうぞ」  今から帰ろうという藤井先生が、黒糖飴を渡してくれる。疲れに甘いものは効く、ぼくは飴を手に出した。手の中で転がる飴を見て思う、村中あきの目は、今思えばビー玉というより黒糖飴だった。半透明とはいえど、茶である。人の目がビー玉に見えるか飴玉に見えるか、年を取るのは切ない。
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