ラムネの季節

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ラムネの季節

 夏になった。村中さんは、あれ以来ぼくと話してくれなくなった。夏期講習の帰り、男と歩く村中さんを見た。化粧をした彼女は、とびきり綺麗だった。綺麗だったが、あの日図書館で見た彼女とは似ても似つかなかった。ぼく達の側に降りてきてほしくなんてなかったのに。心の陽だまりはいつしか、外の気温さながら炎天下になっていた。焼け付くような太陽の中気づいた、これは、人生初の失恋である。ぼくはふらふらになりながら、高校生になってからとんと行かなかった駄菓子屋に向かった。自転車を止めると、自称「駄菓子屋小町」のおばあちゃんが血相を変えて飛び出してきた。 「顔色が真っ青だよ、大丈夫?」  畳で休ませてもらいながら飲んだラムネの味は、今でも忘れられない。落ちたビー玉が、村中さんみたいだった。
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