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ビー玉の目、飴玉の目
「先生、大丈夫?」
追憶の世界から、職員室へと引き戻される。相沢だった。
「部活終わります」
「はい、了解。鍵はこっちで確認するから。お疲れ様でした」
鍵を手に立ち上がるのを、彼女が止める。
「先生、さっきはごめんなさい」
「何が?」
「聞こえてたでしょ」
勘のいいやつである。
「何で私が演劇のこと知ってるってわかった?」
「お母さんがよく話す昔馴染みの人に、先生よく似てるの。名前も一緒。何より本を見せる時のあの癖、ママと一緒。」
どうやらぼくの勘も悪くないようだった。ずっと感じていた疑問、なぜ彼女は運動部ではなく、演劇部を選んだのか。何故彼女は舞台に立たないのか。そして、彼女のビー玉みたいで飴玉みたいな目は、何故「彼女」に似ているのか。
「もしかして、お母さんの旧姓って村中……」
相沢は、そっと人差し指を立てる。
「先生、また明日!」
そしてスカートを翻し、ドアの外へと出ていった。
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