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1.退屈の崩壊
「ねぇ、アレ……」
「やだなに、自殺?」
「まさか!ありえない!」
ガヤガヤと喚く人々。
その目線の先には、白い、まるで実験室から出てきた実験体のような服を着た、
黒い髪を持つ少年が、今まさに高い高いビルの上から
飛び降りようかとしているところだった。
……少年はただじっと一点を、空虚な瞳で見つめていた。
「赤木さん、あれ……」
「…………何してんだ、あいつ」
深海色の髪を持つ少年と、赤木と呼ばれた紅い焔色の髪の中年の男性は、その光景をじっと見守っていた。
中年の男性の方はというと、今にも飛び出して助けに行こうかなんて考えが滲み出るほどに駆け出そうとしていた。
「ねぇ赤木さん?まさか……」
「そのまさかだリュウ、ほれ行くぞ!」
そう言って男性は駆け足でビルへと行く。
「あー……だろうと思いましたよ。赤木さんならやるってさぁ…………」
リュウと呼ばれた少年は、男性をやれやれと言うかのように横目に見ては、渋々といった顔で“空飛ぶ船”を呼び出す。
空虚な瞳で一点を見つめていた少年は、足を一歩、一歩と進める。
____落ちる、落ちる、落ちる……
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