クレナータと見る夢は

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 樹木化は、理想の安楽死とも呼ばれていた。一定まで症状が進むと、足は土を求めてさまよい始める。そして、自分の生育に問題のない場所を見つけると、一晩で根を伸ばし、枝を広げ、皮膚は樹皮になって、瞬く間に芽吹いた葉で光合成を始める。樹木になる過程は、その急速な変化にも関わらず、痛みを感じないらしい。皆穏やかな、夢を見、眠るような表情で、樹木になっていくという話だ。 「とりあえず、あと三ヶ月ぐらいは歩けるでしょう、って。夏とかだったら、倍の速さで進んじゃうんだって」 「……それってつまり、寒いところに行けば、進行が抑えられるってことかな?」 「先生は、急激な環境の変化は、おすすめできません、って」 「うーん……」 「意味不明だもんね、実際」  樹木化の原因は、一切わかっていない。地球環境の悪化のせいだとか、天罰だとか、想像や妄想はここかしこにはびこっているけれど、科学的根拠のある推測は、一切発表されていない。 「で、どう? そこ」 「実際見てみないと、なんともだね。他にもよさそうなとこ見繕って、一気に回ろうか」 「じゃ、有給取った方がいいかな。仕事、大丈夫?」 「うん。じゃあ、明日にでもリストアップしとく」 「ありがと」  会社勤めの里奈は、私より先にベッドに入る。いつも通りおやすみのキスをして、寝室へ向かう彼女を見送ったあと、私はパソコンに向かった。
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