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次の日の夜、私たちは久々に言い合いをした。
「樹木化するかどうかもわかんないのに、取る必要ないでしょ」
私は里奈の隣に、自分用の土地も用意するつもりで、区画選びをしていた。
「念のためだよ。それに、将来的には墓地化も検討してる、ってあるし」
「そういう愛情表現とか、別にいらないから」
「里奈」
「あたし、同意しないから」
私が返事をするより先に、里奈は立ち上がって寝室に入ってしまった。私はすぐ、その後を追った。
ドアを開けると、廊下から差し込む光が、寝室の床を四角く切り取る。その先にある、青白い薄暗闇に沈んだダブルベッドの真ん中に、こんもりとシーツの山ができていた。
私は静かにドアを閉め、慎重にベッドまで足を運ぶ。そして縁に腰を下ろして、しばらくじっとしていた。里奈は泣いていた。
「……あたし、嫌よ」
「どうして?」
「美咲が来るのを、待つの」
「隣に来て欲しくない?」
「違う。待つのが嫌」
沈黙の中で、里奈が必死に言葉を探っているのを感じる。
「……あたし、美咲に幸せになって欲しい。だから、あたしが樹になったあと、美咲が恋をしたら、その人と一緒になって欲しい」
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