エピローグ 『ゲーム終了』

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エピローグ 『ゲーム終了』

半年後、監督をはじめとするスタッフ全員が警察に逮捕された。 どんなに完璧に証拠隠滅をしても、1度にあれだけの人数が殺されていては、真相が知れるのは時間の問題であった。 映画撮影終了後、大量に生産されたビデオテープが、1ヶ月後に全国各地、世界各地で売り出された。同時に劇場公開も行われ、ゲリラ的なこの発表にマスコミ界は騒然となった。 この映画は、そのあまりの残酷な内容から、映像業界きっての問題作として、1ヶ月で驚異的な1000万本の売り上げを残すだけに止まり、以後発売、上映がともに禁止された。 その後、あまりにリアルな映像に疑問を持った人々から、映画出演者が皆行方不明になっていることが警察に報告された。調査が進み、25人の映画出演者達の死体が長野県の山中にある建物の中で発見され、警察は監督をはじめ、スタッフ全員を殺人、死体損壊、遺棄など数々の容疑で逮捕した。 警察は全国に売り出されたテープを回収したが、全てを回収できる訳もなく、残ったテープは『悪魔のゲーム』と呼ばれ、一部の人達の間で永遠に語り継がれることとなった。 また、警察はただ1人の生き残りである鳥越恵美を捜したが、彼女の行方は知れなかった。まるで消えてしまったかのように、この世から姿を消していた。 監督やスタッフ達は恵美の居場所を尋問されたが、当然彼らにもわかる筈がなかった。ただ1つ言えることは、彼女は『選ばれてしまった人間』であるということである。 そんな彼女の所在を一般人である彼らが知る筈がない。 彼女の姿が確認できたのは、映画発表直後の記者会見の時が最後だった。 その記者会見で彼女は一言だけ喋った。 「人間は生きる側か、死ぬ側か。ただそれだけです」 それだけが彼女の残した唯一のメッセージだった。 ……時の流れとともに、事件の記憶は世間から消えていくが、ビデオテープとして残った映画は、これからも永遠に見る者に衝撃を与え続けることだろう。 そして、その映画は無言で語り続ける……。 『あなたは生きる側? それとも死ぬ側?』 完
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