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Jは逃げることも、抵抗することもせず、黙ってナイフの鈍い光を見つめていた。
恵美はごく自然にナイフを彼の胸元に突き立てた。
ゴフッ。と青年は血を吐いたが、悲鳴を上げたりはしなかった。
その口元が微妙に歪むのが、恵美には自分を笑っているかのように見えた。
「私を笑うな!」
……私は選ばれた人間。このダメな男に制裁を下してやらねばならない。選ばれたこの私こそが『人を殺さなくてはならない!』
ザクッ、ザクッ、ザクッ!
……2度、3度……何回も何十回も、恵美はただひたすら、ナイフを突き刺し続けた。
大量に血が飛び散り、恵美の服、顔や手足に至るまで、全てを赤く染める。
Jの青年はとうに死んでいたが、恵美のナイフを持った手は止まらなかった。ただ、機械的な上下の動作を永遠に繰り返し続けていた……。
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