プロローグ『究極のサバイバルゲームへの誘い』

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プロローグ『究極のサバイバルゲームへの誘い』

『緊急告知! このたび、私、伊角十兵衛が作成します映画の出演者を募集いたします。対象は日本国民なら男女年齢問いません。なお、この映画がどんな内容なのかは極秘とさせていただきます。ただ一つ言えることは、必ずやこの映画は映画界に革命を起こすことでしょう。ふるってご応募ください』 新聞で、雑誌で、インターネットで、テレビコマーシャルで。ありとあらゆる手段が使われ、この募集情報は日本全国を駆け巡った。 昨今、日本の映画業界はめざましい発展を続け、その内容はハリウッド映画に引けを取らないものにまでなった。そんな中、日本が誇る映画界の巨匠である伊角十兵衛監督が、十数年の均衡を破り重い腰を上げた。 監督は十数年前、『スウィート・ホームベース』という、野球とホラーを組み合わせた前代未聞の作品を作り上げ、日本だけでなく世界各国から高い評価を受けたほどの人物であった。そんな彼は次回作を期待されながらも突如、映画界から姿を消してしまっていた。十数年経った今、彼は再び映画界に戻ってきた。長い年月、作品の構想を練り続け、彼自身が完璧と言い張る脚本を持ってのカムバックであった。 そんな彼をマスコミたちが放っておくはずもなく、この映画出演者募集の告知は、日本はおろか世界中に知れ渡ることとなった。  先日行われた記者会見での彼のコメントは『私はこの映画以上の作品は二度と撮れないだろう。ただ、この映画は必ず大きな影響を与える』ということだけだった。映画の内容に関することや、撮影期間、撮影場所などその他の質問には全て答えることはなかった。 出演者募集はあくまで公募であり、出演料などは一切でないということだった。映画の内容がわからないにもかかわらず、応募者はプロ、アマ問わず殺到した。その理由は『スウィート・ホームベース』に出た出演者のほとんどが、今ではメディアの第一線で活躍するという大出世を果たしているからに他ならない。応募者は増え続け、最終的には二千万人にも及んだ。それほどまでに監督の新作映画に対する皆の関心の高さがうかがえた。まだ撮影も行われていないにも関わらず、この映画の宣伝は十分すぎる程のものとなった。
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