朝の陽の珠

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 沙優には私より行動力がある。いろんなことにとりあえず取り組むエネルギーを持っているのだ。沙優の前でしきりに自分勝手な思い付きが口をついて出るのは、突き動かし進めてくれる彼女の力を密かに期待しているからだろう。そんな彼女が羨ましくもあり、私はほのかな憧れも抱いている。  私は、別に心の底から朝日が昇るのを見たかったわけではない。想像される虚しい未来から姑息にも逃れたくて。それと多分、彼女なら、どうにかしてこのつまらない未来を変えてくれるかもしれないと期待して。 「え、なんて? 日の出?」  と、驚きと戸惑いの混じった声で沙優が言う。でもすぐに、「えーと、あー、うん……」と独り言を呟きながら頷いて、 「いいねっ! いこいこっ! 三連休だし大丈夫!」  リズムよく快活に言い放つのだった。  三連休だし大丈夫、とはどういうことだろうか。理由と結論が結びついてない気もする。けれど、彼女の目元や口の端に湛えた柔らかな笑みは、私の胸にきらりと閃き靄を薙いでゆくのだった。 「行くって、いっしょに?」 「うん」 「それはいいけど。それで、いつ?」 「今日。これから! 咲良(さくら)がいいなら」  沙優が言う。  やはり彼女には、私にはない力がある。前へと先へと己の足を踏み出すことのできる溌剌さがある。 「どこかって言ったよね? 今から帰って、晩ご飯食べてさ。……そう、電車でも乗って! 今から電車がなくなるまで、できるだけ遠く、どこか知らないような町に。海辺のね」     
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