お兄ちゃんの恋人

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「ああ、でも緊張したな。のどがカラカラだよ。母さんたら驚きすぎて、お茶も出さなかったんだ。健司さん、帰る前にどこかに寄ろう。那奈にもケーキ奢ってやるぞ」  ひさしぶりに会ったお兄ちゃんと、松本さんとももっと話をしてみたい。だけど……。 「今日はこれから大切な友だちと会う約束があるの」  そうか、とお兄ちゃんは残念そうに言って、お財布から一万円札を取り出した。 「これって『これからも二人の応援、よろしくお願いします』っていう賄賂?」 「ばか。これで友だちと遊んで来い。でもあまり遅くなるなよ、女子高生」  はあい、と返事をして借りていた上着を松本さんに戻した。そして、帰っていく二人の背中を見送る。  仲良く並んで歩く二人は、お兄ちゃんのほうから松本さんの手をつないで、こっちが恥ずかしくなるくらいラブラブだった。
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