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「松本さんはお兄ちゃんと一緒にいて不安はないんですか」
そうだね、と松本さんは少し考え込んだあと、にっこりと笑みを深くして、
「この関係がまだ世間には受け入れられないことも理解しているし、たくさん困難もあると思う。きっと、僕も大樹もそれに打ちのめされて泣いちゃうかもしれない。でも、それでも僕は大樹といっしょに年を重ねていきたい。苦しいことも悲しいことも二人で乗り越えて、最後は後悔のないように笑おうって大樹と約束したんだ」
「よかった」
「よかった?」
「わたし、心配だったんです。今までにお兄ちゃんを好きになった女の人はたくさんいたと思う。告白だってされたと思います。でもお兄ちゃんは誰とも付き合うことがなくて、もしかしたらわたしが邪魔をしてるのかなとか、このまま誰も好きになれないんじゃないかなって考えちゃって。だから松本さんが恋人だって聞いて、正直意外だったけれど、それよりもお兄ちゃんもちゃんと人を好きになれるんだってホッとしました」
「そうか。那奈ちゃんは大樹のために悩んでいたんだね」
「悩んでいたって大げさなことじゃないです。今でもちょっと、お兄ちゃんに恋人ができたら寂しいなって思ってるし」
「ははは。それは責任重大だ。那奈ちゃんに叱られないように大樹を大切にするよ」
「松本さんに負けないくらい、わたしもお兄ちゃんが大切ですよ」
お兄ちゃんには誰よりもしあわせになってもらいたい。
だから、松本さんがお兄ちゃんの恋人でよかったと素直に思った。
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