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黒江が怒っているのはもっともだ。白雪と黒江は高校からの友人だそうだが、仲良し、というのは少し違う。互いに互いを負けそうといつもギラギラと競っている。容姿を競い、知性を競い、所有物で競い...相手が嫌いなら離れれば良いのに、そこはなぜか離れない。互いの目の前で相手を打ち負かさないと気がすまない、という訳だ。先日は黒江が1年かけてやっと付き合えた男性を白雪があっさりと奪ってしまったらしい。その現場は正しくこの部屋で、その後この部屋は修羅場と化した。 「何よー、大事なものからはちゃんと目を離さないようにしないとダメよ、黒江。それにちゃんと仲直りしたじゃない。」 白雪は黒江に襟元を捕まれても余裕の表情だ。ニヤニヤしながら、黒江の背後、テーブルの上を見ている。ティーカップの横には小さなミルクポットがあった。 「ところで黒江、具合悪くない?いつもミルクティーにするのは黒江だけだものね」 「うっ...」 黒江が口元を押さえた。 「まさか牛乳に...」 「あんたが考えることは、私にだって考えられるんだからね。自分だけは安全だっていつも過信してるのよ、彼の件だってそうでしょ。」 「このっ...」 黒江が顔を歪ませながら、白雪ともみ合う。白雪も負けずに黒江の髪を引っ張った。 バタバタと暴れ2人とも床に倒れた。 「大体私は、あんたのそういうところがっ」 言いかけた白雪が黒江からバッと離れた。 「きゃああああ!!ゴキブリ!!!」 「え?!どこ!?きゃあああっ!」 二人は喧嘩していたことも忘れて抱き合い、押し合いながら床を走る黒いヤツから逃げ惑った。 「ちょっと!あんた何とかしなさいよ!!」 「無理!絶対無理だから!!こっち来ないで!」 すると黒いヤツは同じところをくるくる回ったかと思うと突然ひっくりかえって動かなくなってしまった。 「は...?死んだ?なんで?」 白雪が近づいて様子を見ようとすると、後ろからドタンと大きな音がした。振り返ると黒江が倒れている。 「ちょっと!今は、そんなか弱いアピールいらないから!」 白雪が嫌悪感を露にして吐き捨てるが、黒江はピクリとも動かない。 「ちょっと、黒江?茶番は止めなさいよ、私が飲ませた薬はもっとのたうち回る系のやつよ...黒江?」 白雪が何かおかしい、と違和感を感じた瞬間、ぐらりと体揺れ、全身の力が抜けた。気づくと頬が床にくっついている。
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