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部屋はすっかり暗くなっていた。そろそろこの家の住人が帰ってくる時間だろう。
部屋の灯りが付き、お酒とタバコの匂いがうっすらと漂ってくる。住人の1人、黒江だ。彼女は長い黒髪を指でとかしながら、やや苛立った様子で着替え始めた。
「あら、おかえり、白雪。私も今帰って来たところよ。」
ドアが開く音がして、白雪と呼ばれた女性が部屋に入ってきた。明るい色のショートボブの頭が黒江の方を向いて揺れる。
「ただいま。思っていたよりも早く帰って来られたよ。そうそう...交差点に新しく出来たケーキ屋さんに寄ってきたよ、食べる?」
そう言って白雪はケーキの箱を差し出した。
「わあ!あそこのお店気になってたんだ!行列だったんじゃない?さすが白雪、気が利くね。」
「この前の仲直りもかねて、ね。すぐにお茶にしようよ。」
2人は軽やかに会話をする。彼女たちはルームメイトなのだ。しかも高校生のときからの付き合いだというからもう10年近くになるのか。
「着替えてきていいよ、私が準備しておくから。紅茶でいい?」
「うん!ありがとう。」
白雪が手を洗いにその場を離れると、黒江は小さく舌打ちをした。そしてポケットから小さな小瓶を取り出した。しばらくして白雪が戻ってくると二人はテーブルに座る。
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