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「ちょっと、、、ウソでしょ!!!!??」
ユミコの大声にオーディション会場の外に並ぶ行列がいっせいにこちらを見た。
「や、、やめてったら。 たまたま次に呼ばれただけだから」
「いやいやいやいや、もうアンタ、運命変わったじゃない!
いつ? いつなの? どこでやるのよ、次は?」
「府中だって」
「あーー、本社ね。 フューチャードリーム本社でしょ!
行ってみたいわぁ~。 アイドルとかいっぱいいるのかしら!?」
「いやー、ただのオーディションだし。 行って帰ってくるだけだよ」
誇らしい気持ちと不安とで、なんと返事をしていいか分からない。
「それよりさ、ユミコはどうだったのよ? 守護霊」
「あーーーー、あたしね。 あたしはいいのよ、もう」
「えー、あんまりよくなかったの?」
「うーん、もうさあ。なんて言うか・・・」
さっきまで興奮していたユミコの顔がみるみる暗くなる。
「あーーー、もう。なんなの? 死にたいわ! っていうかもう今死ぬから!」
暗い顔を通り越して苦痛に歪む表情。ただごとではなさそう。
「あんまり聞かない方がいいかな・・・・?」
「いやーーー、ね。 聞きたいでしょ? そりゃ聞きたいわよね。
こんだけもったいぶって言わないとかありえないわよ、そりゃ」
「んーー、ムリして言わなくてもいいって。
こういうのは胸に秘めとくもんかもしれないしね」
「秘める!? そんな価値ないわよこんなもの」
苦痛に歪んだ表情が、ある種の悟りを開いた顔に変わる。
覚悟を決めた者から出てくる言葉は重い。
「ミジンコだったの」
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