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「おつかれさまです!!」
レッスンスタジオのドアが勢いよく開き、せわしない足取りでメンバーの前に現れたのは Dre@mStation(ドリームステーション)の監督 夏本ヨシキ だ。
「おはようございます!!!」
一同は姿勢を正し監督のそばに集まる。
夏本はあまり体育会系のノリが好きではなく、親子ほど歳の離れたメンバーとはくだけた雰囲気で接することに努めているが、一日の始まりは重要な連絡事項を伝えることが多く、いつも緊張しがちだ。
「えーー、大会まで2か月ということで。
各自パートの完成度を上げていってもらっていると思います。
特にね、新しいAura(オーラ)とかは広い場所でもテストやんなきゃってことで、
あさってだったかな? いつものトコで、やりたいと思いますんで」
デュエリストのレッスンは歌・振り付けはもちろんだが、何よりもAura(オーラ)のコントロールが重要だ。複数メンバーのAura(オーラ)を組み合わせた演出は最大の見せ場となる。それぞれの息がぴったり合わなければデュエルに勝つことは難しい。
「それとベンチのみんな。自分も出るつもりで緊張感持って。
今回ちょっと入れ替えありそうなんでね。可能性高いです。」
大会は4チームのトーナメント形式で行われる。
1vs1のデュエルが2試合行われ、それぞれの勝者によるデュエルで優勝が決まる。
勝ったチームは大会で2曲分のパフォーマンスを披露することになるが、どの曲にするかは直前に変えてもよいことになっている。
特に決勝のデュエルは試合の流れを見て曲の変更、メンバーの入れ替えが行われるのが普通だ。
このため「スタメン」となる2曲分のメンバー以外に「ベンチ」と呼ばれる入れ替えのためのメンバーも大会に向けて厳しいレッスンを重ねているのだ。
「それから、
ベンチメンバーにひとり追加です。」
やはり重大発表があった。
リツコとサキは予想通りといった表情で目を合わせた。オーディションの後でメンバーが追加されることはよくあるのだ。長い付き合いである監督からもなにかそれらしい雰囲気を感じとっていた。
他のメンバーは教室に入ってくる転校生を待つようにザワつきながらスタジオのドアを見つめた。
「結輝アイさん。入って」
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