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オーディション
「アイーー!! さあ、行くよ、ほれ!」
終業のチャイムが鳴り終わらないうちに鼻息を荒くして飛びかかってきたのはユミコだ。
「え! もう行くの? ちょっと早過ぎじゃない?」
「何言ってるの! 今日が運命の日になるかも知れないんだよ! 遅刻とか絶対ありえないし!!」
『第19回 デュエリストオーディション』。
アイとユミコが半年間待ち続けたこのイベントから多くのアイドルが排出されている。
2組のアイドルユニットがパフォーマンスを競い合い勝者を決める。これが「デュエル」だ。
デュエルに参加するためには、『スピリットシステム』を使いこなす必要がある。
それができて初めてアイドルは「デュエリスト」と呼ばれるのだ。
フューチャードリーム社が最新の技術をあますところなく投入して開発した『スピリットシステム』はアイドルが最高のパフォーマンスを見せるための究極兵器だ。
このシステムの登場によりエンタテインメントの世界は大きく変わった。
「あー! ドキドキが止まらないわ! ビーナスとか出ちゃったらどうしよう!?
もう神よ、神!」
「ふふっ、ユミコだったら笑いの神とかじゃない??」
「なによ! じゃあアイは自分の守護霊何だと思うの?」
「えー、私? 私はぜんぜんダメでしょ。 ミジンコとかじゃない?」
「ミジンコなんて出るワケないでしょ!! 微生物よ! 人ですらないし」
初期状態ではごく普通のマイクに見えるこの『スピリットシステム』は、使用者のあらゆる素質を解析し、固有のカタチに姿を変える「舞器(ぶき)」となる。
ある者はハート型の舞器を、ある者は大きな翼を広げた舞器を手に華麗なパフォーマンスを繰り広げる。そのカタチは剣や動物などさまざまである。
そして舞器にはそれぞれ名前が与えられる。「ビーナス」「エンジェル」などファンタジックなものから「クレオパトラ」「ジャンヌ・ダルク」のように歴史上の人物であることも。
使用者の特性を解析してカタチを変え、名前を与える。舞器はその人の個性そのものなのだ。
与えられた名前はいつの頃からか「守護霊」と呼ばれるようになり、自分のそれが何かを知ることはすべての女子にとって最大の関心事となっている。
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