あなたに

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わたしは、完成した花束を手にとった。 すると花束から、ふわりと、どこか懐かしい香りが広がった。 昔わたしとあなたが作ったアロマオイルの香りだ。 実はわたしは、この花束を作り始める前から、白い包装紙にあらかじめアロマオイルの香りを移しておいたのだ。 ブリザーブドフラワーは、本物そっくりで、色や種類も豊富だが、 唯一の欠点は、香りが無いことなのだ。 だからわたしは、あなたの驚く顔が見たくて、どうやったら花束に香りがつけられるか考え、 最後、この考えにたどり着いたのである。 鼻孔を包み込む優しい香りを、暫し楽しんでから、 わたしは身の周りの準備を整え、あなたの家にむかった。 空はもう、茜色に色づいてきている中、 何処か寂しげな静寂を破る様に、わたしのヒールがコツコツと音をたてていた。 あなたは今も、変わらないのだろうか わたしが知っているあなたのままで、変わらずいるのだろうか この花束をみたら、どんな顔をするだろうか 驚くだろうか 笑うだろうか ……そんなことを考えているうちに、あなたの家についた。
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