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投石の如く投げ込まれた間違い、という言葉に対してグラスから唇を離した櫻子が言葉尻を強めて、グラスの奥にある睫のびっしりと生えたアーモンド型の瞳をきりりとつり上げた。
「まさか、貴女も乳首差別主義者な筈、ないでしょう?」
彼女の声は、良く晴れた早朝の芯まで透き通った空気の中で太陽の頭が地平線に線として赤々と上り始めたか否かの頃にどんな動物や植物よりも速くに目を覚まし、朝を告げて鳴く鳥のような、美しい声をしていた。
唇はグラスの氷の結露を吸い、甘美な蜜のように照りを乗せてほんのりとした血色に昂揚しているようであった。
「いいえ、違う。私も男女の乳首は平等であってほしいと思っているし、そうあるべきだと思っているわ。」
「なら、何が間違っているというの?」
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