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幸運だったのは、売春宿の主は色々な意味で「怖い人」だったけれど、私にはいい人だったことだ。
何度か宿で仕事をもらううちに、売春宿の主は私にとりついた男が私のためにはならないと気づいてくれた。
半ば洗脳状態で男に従っていた私から男を引きはがして縁を切りしてくれて、さらに客の中にいる料理界の人間をさりげなく私に紹介してくれた。
客の一人が私のこと気に入ってくれて。
客に引き取られるように売春宿を後にした私を、売春宿の主は暖かく見送ってくれた。
私を売春宿に落とした男のその後は、今日に至るまでついぞ知ることはなかった。
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