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祖母の背中に伝う水滴を指の腹で拭う。そうしたら、自身の気持ちに区切りがつかなくなり、心に何かが押し込まれる。押し込まれた瞬間、心の空間は耐えきれず爆発する。
祖母の背に私は額をもたれかけさせる。祖母の背中は冷たく、幽霊にもたれかかっているようだった。
「おばあちゃん」
ーーなぁに、お嬢さん。
次第に祖母の背が下がってくる。私の重さにつぶされそうになっているのに祖母は何も言わない。ただ笑って応えてくれる。
「長生きしてね」
ーーもちろん。
もわっとした霧が体にまきつく。しかし額の熱はどんどん祖母の冷たい背中に吸い込まれていく。
そうして私は瞼を再び開けた。
視界は明けて、霧は晴れていた。
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