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その温かさをより感じたのは中学になった時、年末に祖父母の家に行った時だった。思わず炬燵で丸まり、寝てしまった私はあさっぱらに起きて、くしゅんっとくしゃみをした。鼻をすすり、髪の毛をかきむしる。伸びっぱなしの私の髪の毛を見て、祖母は櫛を持ってきて、私を炬燵からだした。それから背中を向けさせた。背後にいる祖母は小学生の時と同じように、お嬢さんと私を呼んだ。
ーーお嬢さんなんだから髪の毛の手入れはするべきよ。
さらさらと櫛で祖母はといていく。耳にちらっと祖母の手が触れる。祖母のかさかさになった手の感覚を感じる。数年前と変わらないのに、より年が感じ取れるようになっていてすぐにも崩れそうで不安になった。後ろへ振り返ろうとするも、祖母は私の顔を正面に向けさせる。櫛は途中からみあい、なかなかとけない箇所に行き当たる。私なら力づくでとかす部分を祖母は何分もかけて絡む髪をほどいていた。
その優しい手。祖母の非力な力。とかすごとに首筋に当たる祖母の温もり。温かいが、儚さがあって苦手だった。
ーー女の子だからってしなきゃならないのは、よくわかんない。
不安だからか私はまたもや不満が吹きこぼれた。祖母の表情は見えなかった。代わりに祖母はお嬢さんお加減はいかがですか。と非難するでもなく優し気に耳元で囁く。祖母の加齢臭がぷぅん、と鼻につく。祖父母の家がはらんでいる懐かしい香りと同じ匂いで、目を閉じて空間の香りを吸った。去年より、一昨年より、私はより強くその香りを体内にいれる。
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