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その夜、近くの銭湯に親子三代で行った。銭湯に行くこと自体は別段珍しいことではなく、昔からしていたことだった。銭湯へ行くと母は決まって、最初にのぼせ上りすぐに出てしまう。残った私と祖母で背中の洗いあいをしていた。
私は背を見せて、祖母のタオルが背中をふくのをつぶさに感じ取る。やはりそれは少しだけ力が弱まっているように思えた。泡が背中を覆い、石鹸のかぐわしい香りが充満する。体は火照り、銭湯の霧に私達は身を紛れさせる。裸体の私が銭湯の鏡にうつる。洗面台が置かれた分厚い台の上にぷくぷくと泡が飛び散っていた。そして私の背中からお湯が流れていき、台の上の泡は波に流される海の霜のように消えていく。
ーーお嬢さん、おかゆいところはないですか。
と祖母が言うものだから、私はないって、とまた突っ張ってしまった。今度はこちらがくるっと体を回転させて祖母の背中を洗い流す番だ。
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