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第三章 灼熱の一夜
二人はそのまま、明のセピア色のアパートメントに帰って来た。
雅は少し身体をこわばらせていた。
明の部屋に入った瞬間、彼は自分の想いを確かめることに、恐怖さえ覚えていた。
こんなことを言ったら…明に何て言われてしまうだろうか?
あなたが欲しくなりました。オレにとってどうしても、必要な存在になってしまった。
友達として、恋人として、あなたが全部。
それに明は応えてくれるのだろうか?彼が自分と同じ想いでいてくれるかどうかなど、賭けに等しいというのに。
「ミヤビ…」
少し掠れた声で、明は雅の背後に立ち、背中から片腕で彼を引寄せた。その力強い腕に、雅は両手を添えた。
「アンタを抱かせてよ……」
想いが重なる瞬間、雅は心が震えた。
明が自分を欲しいと求めてくれた。
こんなふうに始まる奇跡に震えて泣きたいくらいになっていた。
*************
二人でバスルームのシャワーを浴びながら、明は雅を固く抱きしめていた。
肩口にそっと頬を載せ、うなじに口付けを受けあう。
(雅……本当にアンタを奪っていいの?)
明も心のなかでそう呟いていた。
(オレはアンタを傷つけるかもしれない)
(いや、確実に傷つけるんだろうな…最低だと思われても、憎まれても)
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