第四章 秘密

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「…前から気になっていたんですが…」  雅は明の左上腕に指をそっと滑らせる。 「このタトゥー、変わってますよね…」 「ああ、うん…」  明はそれ以上は何も言わなかった。触れてほしくない訳でもあるのかもしれない。 それはまるで燃え尽きようとする、寸前の炎のような模様だった。  明に抱かれている最中でさえ、その文様が何故か気になって、ついつい見つめてしまう雅だった。 「…セックスしてる時ぐらい、ぼんやりしないでよ…」  明は苦笑しながら雅を突き上げた。 「……だって……あなたのことだけ、考えて……」 「……なら許すよ」  息をのむような興奮と快楽で、彼はその後、明のタトゥーについて触れることはなかった。  得体の知れない危険な男。 一瞬だけ雅の脳裏に不安がよぎったが、それは明に抱かれることによって、簡単に掻き消されてしまうのだった。 *************  雅が帰国する日、彼は空港のロビーで別れを惜しむ辛さでやるせなくなるかと思いきや、 明が見送りに来てはくれなかったので、少しだけ落胆していた。 あっけない搭乗。そして10時間後には成田に着いていた。 「…やっぱり流されていたのだろうか。…明さんとあんなふうになったのも、旅先ではしゃぎすぎていたんだろうか?」  雅はトランクの取手を伸ばし、キャリーの状態で荷物をトロトロと運んだ。 再会を約束したが… あれも情事の最中だったし、 本気になるのは、よくないのかもしれない。  雅は気持ちを自分でなんとか切り替えようと試みた。 あれは、ちょっとふざけていただけだと。 人恋しくて、明に縋っただけなのだと。 それにしても…男相手に火遊びだなんて… 情けなくて泣けてくる…。
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