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「明日、時間が出来たらメシでもどう?」
着替えを終えた明が雅に微笑みかけた。
「明日は…取引先をちょっと回るだけですから、早めに仕事も終わりますので是非!」
「じゃ、決まりね。7時に新宿で待ち合わせしていい?」
「わかりました」
玄関先でおやすみを兼ねた、またね…のキスを軽くした。
抱きしめたら、その腕をすり抜けるような人。
それなのに、抱き合って愛し合う最中は燃えるように体が熱くて…。
明さんのことをもっと知りたい…。
本当に、彼は作家なんだろうか?
雅はミステリアスな彼の周辺が気になり始めていた。
「まいったな…オレ……すっかり明さんにイカレてる…」
玄関の扉を閉めて見送った後、雅の高鳴る胸は静まることもなく、胸の内から激しく打ち返してくる。
その夜、明と再会したことで、なかなか眠れずにいた彼だった…。
************
「密売組織の中堅クラスが国内に入ったのは確かってこと?」
「……ええ、私たちが追っていた連中とは違うみたいだけど…。でも、泥を吐かせたら何か出てくるかも」
「そう願いたいねー」
雅と別れたあと、明は滞在しているホテルの一室で、彼の国で一緒だったルミと話していた。
「ところで…」
彼女は少し茶目っ気な顔で明を見た。
「…あなた、観光で来ていた例のリーマンとは再会したの…?」
「…ッ!」
ルミの鋭い一言で明は普段の姿からは想像出来ないほどに動揺し、口にしていた水割りを吹きそうになった。
「……いきなり茶化さないでよ」
「なぁんだ、やっぱりもう会ってきたんだ?どおりで機嫌がいいのね?さっそくご無体をはたらいてきたような…」
「お前ねぇ…」
「…でも、アキラ…」
ルミは急に真剣な顔になった。
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