第四章 秘密

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 ルミの忠告は、愛する者を突如、自分のせいで失う辛さを物語っていた。 それを痛いほど解っている明である。  明もまた、同じ捜査官だった幼馴染みの幸人を、捜査の途上で殉職させてしまっていた。 ……ごめん、雅…。でも… アンタを守るためには、オレは雅に 何も言えないんだよ…。 ***************  明は雅と新宿の地下鉄入り口付近で待ち合わせをした。 先に着いたのは、明の方だった。 「…ご……ごめんなさい!明さん!」  遅れて息を弾ませながら、地上へと出る階段を駆け上り、雅は明の元へとやってきた。 「…いーや、気にしないよ。それより、仕事お疲れ様…」  明はにっこりと笑い、労いの言葉を雅にかけてやる。 「……はい!今日は、明さんのことばかり考えていたから、仕事はとてもはかどったんで…」 「可愛いこと言ってくれちゃって…」  そんなふうに明が雅の肩を抱き寄せようとしたとき、ふいに彼は背後に殺気を感じた。 「Mourez!!」  ナイフを持ったアジア系の男が、明に襲い掛かってきたのだ。 あたりは騒然となっていた。道を行き交う人々は逃げ惑い、女性の悲鳴が遠巻きに聞こえた。  雅は一瞬、何が起きているのか理解に苦しんだが、持っていたビジネスバッグで明を守ろうとした。 「サンキュ、ミヤビ!!でも…」 できれば、逃げてくれるかな?  明はニヤリと笑うと、雅を突き飛ばした。 その後、男ともみ合いになりながら、明は男の凶器を持った手首を掴み、後ろへとひねりあげる。 「Separez une main!」  男が離せと叫んでいる。どうやらフランス語のようだ。 明に言われたとおり少し離れていた雅は、明の周辺に不穏なものを感じた。 (“あの国”で、明さんに何かあったんだ…!!)
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