第四章 秘密

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「…………ホントに……あなたって人は」 ムチャクチャです…明さん。  涙の跡が残る雅の頬に、やっと笑みが戻った。 「……雅、オレは大丈夫だから、心配しないで」 「……でも」 「…とはいうものの…隠していても……もうダメかぁ」 まいったな…と明は後頭部に手をやりながら苦笑する。 「巻き込みたくなかったんだけどねー。でも、もう、今日狙われたってことは、充分巻き込んでるンだろうね…」 「どういうことなんですか?」  エレベーターのなかで、明は雅を抱き寄せたまま、耳元で答えてみせた。 「オレは今、危険な仕事に就いてる。でも、残念ながら、悪人じゃーないよ。それに、作家活動してるのも、あながち嘘じゃないしー」  ザンネンでした、と明はふざけて舌を見せる。 子供のように……。  だが、すぐに明は真顔になった。 「…そういうことだから、雅、今夜からオレと一緒にホテルに泊まりなよ?オレに関わっちまったから…アンタもターゲットにされかねないンだから」 「え?そんな…!オレ、明日も仕事が…」 「会社はホテルから通いなよ?通勤はオレがガードしてあげる」 *************  その夜から、明に言われたとおり、雅は明が滞在するホテルに一緒に身を寄せることになった。着替えもなく、ほとほと困り果てていると明がYシャツと下着を数枚とネクタイを数本、ホテルの人間に用意させてくれた。  なんとか出勤には格好がつきそうだ。 それにしても……明が就いている危険な仕事とは、何だろうか?  翌朝、出勤の満員電車に揺られながら、雅はずっと考えていた。言葉どおり、明は彼のそばでガードしてくれている。 そして…雅が明の言葉を信用しようと決めた理由がもうひとつあった。 ≪……今夜から一緒にこの部屋で寝泊りしてもらうけど、残念ながら、セックスはナシだよ、雅。オレだってアンタを抱きたいけど、それじゃ、敵が襲ってきたら丸腰だからね≫
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