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第五章 あなたを失いたくない
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「そういうわけだから、なぁー佐野!すまんが、急遽先方にプラン書を届けて再プレゼンしてきてくれると有り難いんだがな…」
「…わかりました」
雅は直属の上司に即答しながら、明から言われた言葉を思い返していた。
≪いい?雅。どうしても外出するような用が出来たら、メールでも携帯でもいいから、オレを必ず呼べ。いいな?単独行動はナシだ!≫
…ちょっとぐらい、いいかな。
行く先はほとんどオフィスから目と鼻の先だった。昼休みには再び明と会えることになっている。ならば大して危険なこともないだろう…と雅は彼なりに判断した。
彼は会社の受付を通りエントランスを出ていく。総ガラス張りの自社ビルには、真昼の鮮やかな青空と雲と、太陽の照り返しが映っている。
(変わらない風景だけど、こうして改めて見ると壮観だな…。)
そんなふうに雅は思いながら、前方に大きく広がる、人工大理石のピロティをやや速や足で歩いていた。
ただ、そんな彼を植栽の植え込みに隠れて見ているひとつの影があった。手には消音銃が握られている。それは雅が未だに想像すら出来ていなかった、明の追っている組織の一員だった。
彼らは捜査する明にダメージを与える為、雅にターゲットを変更したのだ。
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