第五章 あなたを失いたくない

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 少しクセのある長い黒髪。真っ赤なルージュの女。まじまじと見つめてくる雅に、女は溜息交じりで言った。 「初めまして、佐野 雅。……なるほどね。アキラに言われなかった?どんな場合でも、一人で出歩くなって…。アンタ今、命狙われてるのよ?」 「……あなたは、明さんの…知り合いなんですか?」  ここでようやく雅は女が偶然居合わせた人間でないことを知った。 「そっ…。いわば同僚みたいなものね。ルミって呼んで頂戴ね」 「…あ、あの…!助けてくださって有難うございました」  全てが突然のことで雅は目の前の命の恩人にさえ、今の今まで礼を言うのを忘れそうになっていた。 「…明に頼まれていたの。≪オレが捜査中のときは、佐野 雅を護ってくれ≫って。アイツはまだ、状況が解っていないだろうから、一人で動く可能性があるって。ほーんと、アイツの読み通りの行動をするのね、アンタ。どおりで明がほっとけないはずだわ…」 「………すみません」 「あら、やだ…そんなに凹まないでよ。ホント…アンタ、かわいいわね!確かに私のお気に入りのジャケットに穴開いちゃったけどさ、アンタが解ってくれたらそれでいいのよ…」  ルミはくすくすと笑うと、雅の背中を勢いよく気合い入れでもするように叩く。 「……だけど………」  彼女はしょんぼりとした雅に自信を持たせるかのように言った。 「アンタとアキラ、お似合いのカップルだって、ホントに思うわ」 「…?」 「ん…、具体的には説明しづらいけど、アンタたち、互いに想いあってるみたいだし」  ルミの意外な一言に、雅は静かに否定して返す。 「……でも、オレ、彼のこと、本当に何にも知らないです」 「知りたいの、アイツのこと?」
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