90人が本棚に入れています
本棚に追加
少しクセのある長い黒髪。真っ赤なルージュの女。まじまじと見つめてくる雅に、女は溜息交じりで言った。
「初めまして、佐野 雅。……なるほどね。アキラに言われなかった?どんな場合でも、一人で出歩くなって…。アンタ今、命狙われてるのよ?」
「……あなたは、明さんの…知り合いなんですか?」
ここでようやく雅は女が偶然居合わせた人間でないことを知った。
「そっ…。いわば同僚みたいなものね。ルミって呼んで頂戴ね」
「…あ、あの…!助けてくださって有難うございました」
全てが突然のことで雅は目の前の命の恩人にさえ、今の今まで礼を言うのを忘れそうになっていた。
「…明に頼まれていたの。≪オレが捜査中のときは、佐野 雅を護ってくれ≫って。アイツはまだ、状況が解っていないだろうから、一人で動く可能性があるって。ほーんと、アイツの読み通りの行動をするのね、アンタ。どおりで明がほっとけないはずだわ…」
「………すみません」
「あら、やだ…そんなに凹まないでよ。ホント…アンタ、かわいいわね!確かに私のお気に入りのジャケットに穴開いちゃったけどさ、アンタが解ってくれたらそれでいいのよ…」
ルミはくすくすと笑うと、雅の背中を勢いよく気合い入れでもするように叩く。
「……だけど………」
彼女はしょんぼりとした雅に自信を持たせるかのように言った。
「アンタとアキラ、お似合いのカップルだって、ホントに思うわ」
「…?」
「ん…、具体的には説明しづらいけど、アンタたち、互いに想いあってるみたいだし」
ルミの意外な一言に、雅は静かに否定して返す。
「……でも、オレ、彼のこと、本当に何にも知らないです」
「知りたいの、アイツのこと?」
最初のコメントを投稿しよう!