0人が本棚に入れています
本棚に追加
他人ばかりの自分の葬式は退屈だった。けれど、ほとんど話したことのない同級生が大きな声をあげて泣いているのは面白かった。なんでこいつら泣いてんの。わたしは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった同級生の顔を覗き込んで笑った。ぐるぐる式場を漂っていると、女子数人がこそこそとなにか話している場面に出くわした。いったいなにを話しているのだろう。そっと近づき、わたしは何食わぬ顔で輪の中心に立った。
「ねえ、イチコちゃんてさ、なんで泣いてないのかな」
「たしかに。だって、ランちゃんとあんなに仲良かったじゃん」
「めっちゃ冷たいよね」
「まじでありえないわ。だって、うちらの中で誰か死んだらめっちゃ泣くもん」
「絶対泣くー!」
ふうん。わたしは彼女たちの顔をじっと覗き込んだ。うそばっかり。ほんとはあんたたちがそんなに仲良くないの知っているよ。だってその場にいない人の悪口ばっかり言ってるものね、あなたたち。わたしは彼女たちの頭に順番に触れた。イチコの陰口をたたく嘘つきにはおしおき。うまくいくかわからなかったが、彼女たちは次の日からしばらく学校にはこなかった。ただでさえ、呪われていると噂されていたわたしの葬式だったので、彼女たちが高熱で休んだのもわたしの祟りだと噂になった。まあ、間違いではないのだけれど。ところで、彼女たちを呪ったのは、イチコの陰口を言われたからという単純な理由だけではない。泣いていないからといって、イチコが悲しんでいないと言えるその想像力のなさたるや。本当にびっくりする。
最初のコメントを投稿しよう!