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「イチコ、ばか! 死ぬな!」
ぴんと空気が張った気がした。
「え」
イチコはわたしのほうをまっすぐ見た。初めてイチコがわたしの声に反応した。わたしたちは見つめ合った。しかし、いつもと同じように視線は合わない。すこしずれたところを見ているだけだ。
「ラン……?」
ずっと無表情だったイチコはわたしの名前を呼ぶとぽろぽろと涙をこぼした。静かに静かにイチコは泣いた。
「イチコ」
わたしはイチコを抱き寄せようとした。けれど、わたしの手はイチコの身体に触れられない。悔しくてわたしもイチコと一緒に泣いた。
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