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南はこの男子校はじまって以来の秀才と言われていて、常に成績はトップ、学費免除の特待生でIQ180という噂だ。卒業したらアメリカの大学へ行くことになっているらしい。
そのくせ偉ぶったりしてなくて、物腰はおだやか、品行方正でいかにも清潔そうなたたずまいをしている。
ふらちな意図で触れたらバチが当たりそうな、どこか神々しい感じのするきれいな少年だった。
「常盤くんほど奔放じゃないけど、おれだって何人かは……佐々木先生はそのうちの1人にすぎない」
「まじかよ」
常盤は目を見ひらいて南を凝視した。
華奢で白くて、汚れを知らなそうな美しさ――この体を知っている男が何人もいるなんて信じられない。
常盤は中等部のころから、先輩や教師に言い寄られてきた。そんな自分と南は人種が違うと思って、とくに親しむこともなかった。
「もう今日は卒業式だからね、きみに知られてもかまわないかな」
南はうっすら笑みを浮かべ、ぐいっと教卓の下に頭を突っ込んできた。
「な、なんだよ?」
「常盤くんと肌を重ねてみたいと、ずっと思ってた」
鼻先がくっつきそうな距離で、南は小さくささやいた。
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