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「おれなんか、とっくに汚れてんのに」
「きれいだよ。常盤くんは誰より清らかできれいだ。絵を見ればわかる」
「……そんなこと、誰も言わないのに」
常盤は鼻の奥がツンと痛くなって、南の肩に顔を押しつけた。
初めて教師に襲われた時から、どうせ汚れた身だと思って奔放なふりをしてきた。南のようにきれいな体の人間とは、わかりあえないとばかり思っていたのだ。
「ずるいよ、南。こんな……卒業式の日になってそんなこと」
「うん、ごめんね」
アメリカに行ってしまうくせに、と常盤は南を恨めしく思った。
「今はまだ約束できないけど、もう少し大人になったら、常盤くんを迎えに来てもいい?」
「南……それ本気?」
「もちろん」
常盤は胸がいっぱいになって、南の細い首に両手をまわした。
「待ってる、と思う」
「と思うって」
南は笑いながら常盤の首筋に口を近づけた。強く吸われ、ピリッとした小さな痛みが走る。
「このマーキングが消えても、おれのこと忘れないで」
「うん」
常盤も南の首筋に吸いついて赤い痕をつけた。
「キス、もう一度したい」
「おれも」
ふたたび唇を合わせた2人の耳にチャイムが鳴り響いた。
「卒業式はじまっちゃうな」
「行こう」
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