後編

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「おれなんか、とっくに汚れてんのに」 「きれいだよ。常盤くんは誰より清らかできれいだ。絵を見ればわかる」 「……そんなこと、誰も言わないのに」  常盤は鼻の奥がツンと痛くなって、南の肩に顔を押しつけた。  初めて教師に襲われた時から、どうせ汚れた身だと思って奔放なふりをしてきた。南のようにきれいな体の人間とは、わかりあえないとばかり思っていたのだ。 「ずるいよ、南。こんな……卒業式の日になってそんなこと」 「うん、ごめんね」  アメリカに行ってしまうくせに、と常盤は南を恨めしく思った。 「今はまだ約束できないけど、もう少し大人になったら、常盤くんを迎えに来てもいい?」 「南……それ本気?」 「もちろん」  常盤は胸がいっぱいになって、南の細い首に両手をまわした。 「待ってる、と思う」 「と思うって」  南は笑いながら常盤の首筋に口を近づけた。強く吸われ、ピリッとした小さな痛みが走る。 「このマーキングが消えても、おれのこと忘れないで」 「うん」  常盤も南の首筋に吸いついて赤い痕をつけた。 「キス、もう一度したい」 「おれも」  ふたたび唇を合わせた2人の耳にチャイムが鳴り響いた。 「卒業式はじまっちゃうな」 「行こう」     
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