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篠ノ井 羽乃(シノノイ ハノ)と田島 美代子はたった2人、校舎の1階にある美術室でまだ空白のあるキャンパスとお互いの顔を交互に睨み合っている。
羽乃が学校へ着くまで。光は町中を張り巡っていて、日差しは肌を焦がすように照りつけた。木々は瑞々しい色の葉を幾重にもしてその青春を謳歌していた。
その雰囲気と清澄な夏の空に呑まれて、篠ノ井羽乃は「私はどこにだっていける」と思った。
左手に筆を握った羽乃がにやにやと美代子の顔を眺める。
「ミヨちゃん、やっぱりまつ毛が長いね。」
「えっ、そうかな」
「うん、キリンみたい。首も長いし。でもキリン、どうしてあんな模様なんだろう。あみだくじみたい。キリンはベロもめっちゃ青い、変なのー」
羽乃が舌を出してみせる。
「キリンの舌って、青いの?」
「そうだよ、他にも変なのはいっぱいいるよ、ペンギンは歯がギザギザで凶悪だし、カメレオンは舌をバネみたいに畳んで仕舞ってある!ぐるぐる!」
「羽乃ちゃんはほんとうに動物が好きなんだね」
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