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美代子は優しい笑顔で穏やかに喋る。
羽乃はよく思った。ミヨちゃんは他の子と違う。まつ毛は長いし、身長は私より何センチも高くてすらっとしてる。髪。肩にかかる程あって、漆を塗ったみたいにつやつやでさらさらだ。大人の人みたいに綺麗で落ち着いてる。
「うん!私は動物が好きだ!」
羽乃は筆を持ったまま立ち上がった。
「あとは絵の具の匂いが好き。
ここにいるとたまに風が吹き込んで、プールの匂いとかグラウンドの土の匂いがそれに混ざるのも好きだ。他にも、ゆっくりながれてく夕暮れの雲をずっとみていたい。この椅子も好きだ。硬くて、彫刻刀で削られたりして傷だらけ、でもなんだか落ち着く。なんでだろう」
「羨ましいな、羽乃ちゃんは好きなものがいっぱいあって」
「そんな、美代ちゃんだって」
「あっ、」
羽乃が美代の側へ駆け寄ってその手元を覗きこんで言う。
「美代ちゃんはこんなに絵が上手い、私の似顔絵だってそっくりだ!私だって美術部なのに!」
そう言って、羽乃は自分のキャンパスを持ってきて美代子に見せる。そこには抽象画が描かれていた。
「見て、全然にてない!」
羽乃も美代子のことを描いているつもりだ。
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