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「見て、全然にてない!」
羽乃も美代子のことを描いているつもりだ。
わはは、と笑う。それにつられて、美代子もくすっとだけ笑った。
「あー、笑った!お前笑ったな!人の絵をみて!ジンケン侵害だ!弱者を蹂躙!卑劣極まりないな!」
「ふふ、違うの。羽乃ちゃんがあんまり元気だからおかしくて。」
「おかしい?私が?私はおかしいの?」
羽乃が目をまわす。
「絵は写実的じゃないだけで、いい絵だと思う。黒の使い方とか、リヒターの抽象画みたいだよ」
「ふーん、やっぱり詳しい!やっぱミヨちゃん、絵が好きなんだ!それにしってる!1年の時、いっぱい色んな賞もらってた!」
強い風が吹いて、カーテンが吹き飛ばされそうなくらい大きく膨らんで、美代子の髪がさらさらとなびく。
「どうなんだろう、わからない。賞だって1年前だよ」
羽乃は思った。「ミヨちゃんはたまにたった一人、影の中にいるみたいだ」
私達がここにいるのは美術部の顧問に許可を貰った2時間だけで、そのうち半分くらいは話したり歌を歌ったり、持ってきたお菓子を食べたりした。
美術室の鍵を閉めて学校の外へでると2人は限られた小遣いであれこれとやりくりして、
日曜日の午後は日が暮れるまで一緒にいた。
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