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虫唾の走る常識様
ドアをくぐると祝福の声に包まれる。おめでとうだとか末永くお幸せにだとかありきたりな言葉が私たちに向けられた。
ああ、もしも、これがもしも隣にいるのが……女性であったなら、この視線はどう変わるのだろうか。
そうだ。
私は
僕は
好きでもない人と今日、結婚する。
私にとって、男性というのは結局恋愛対象になり得なかった。
小学校に早熟な友達たちが誰が好きかってキャッキャと楽しそうに話しているのを見て、ただ漠然といつか私にも好きな男の子ができるものだと思っていた。
中学生になって、胸も大きくなり始めて、彼氏もいつの間にか出来ていた。部活仲間で友達みたいな奴。帰り道に一緒にチキンにかじりつきながら、俺たち付き合ね?って随分とまぁガサツな告白だった。
案外付き合ってみれば、好きになれるのかもしれないと思った。いつもと同じように過ごしたり、いつもよりちょっと張り切ってお出かけしてみたり、それはそれでそれなりに楽しかった。
始めて、そんな雰囲気になって、私たちは赤々とした夕焼けをバックにキスをした。ファーストキスだった。たぶんそいつもそうだったんだと思う。終わってみてなんてないって顔してた割に耳が真っ赤だったから。
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