虫唾の走る常識様

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そうだ。私がちょうど階段に足をかけて自分の部屋に向かおうとしていたとき、チカチカと光る画面では女同士・男同士の恋愛とデカデカとテロップが流れていた。 母はそれを見て気持ち悪い、そう吐き捨ててテレビを切った。 私の初恋も、ちょうどその言葉で終わってプツリと黒い画面に覆われた。 その後、疎遠になって、お互い別々のグループで過ごして結局そのまま卒業した。 女子高生で、恋に憧れる可愛らしい女の子で、友達だと思っていた同性に好意を伝えられるのはどれだけ嫌だっただろう。 私は自分がずっと感じていたその不快なモヤを彼女にまで押し付けた。遠い噂で結婚したと聞いたときはとてもホッとした。 大学生になっても結局たいして何も変わらないでやれ彼氏やら、やれ彼女やら後は遊びに行くってことぐらいしかみんな頭になかった。後はだいたい金がないってのを口癖のように言っていたぐらいだろう。 そうやってもう一度失望しながらしょうもない4年を終えて、社会人になって気付いたら数年が立っていた。 親は早く結婚しろってうるさいし、週末に届く結婚式の招待状はいやでも私を急かしてくる。 そんなこと言われたって私には男を好きになれない。あれは、恋愛対象に含まれる生物じゃないのだ。 そんな時、ようやく気づいた。 随分と長く遠い道だった。     
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