虫唾の走る常識様

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社会に出て余裕が出て道が広くなって、その次は焦ってまた道が狭くなって、ようやく見えた道。 私と同じように悩んでいる人たちがいるのを知った。 考えてみれば当たり前だったけど、それほどまでに世間の普通ってやつは強固でずっと見えないでいた。 孤独に生きてきた私にとってその存在はあまりにも救いで暖かかった。 始めて彼女ができた中学生みたいにはしゃいじゃってバカみたいに張り切ってテンションマックスでデートに行ってちょっと引かれた。 それでもなんとか楽しくやって、二人で洋服を見たり、二人で一緒にお菓子を作ったり。 そこには私が望んでいたものがぜんぶぜーんぶあった。 誰にも言えない同棲生活。 周りにはありふれたシェアルームだと嘘をついて婚期が遅れるぞって茶化される。 鍋をかき混ぜながらカレーの匂いで部屋を満たして、彼女の帰りを待つあのひと時はどうしようもないぐらい幸せだった。 彼女とならどんな苦難も乗り越えられるって信じていた。 だから、彼女の口から結婚したいって言葉を聞いたとき私は夢なんだと思った。 こんな幸せな現実が崩れてしまうわけがないって。こんなに綺麗な宝石がくすんでしまうわけがないって。 私たちの宝物はまた、世間様の偉ぶった常識とやらに踏み潰された。 何が偉いんだ。     
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