虫唾の走る常識様

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子供を残すだとかいう随分と動物的な欲求がどれだけ偉いっていうのか。 随分と虫唾の走る話じゃないか。 どこにでも転がっている。ああ……私の彼女は世間様の気持ちの悪い風潮に押しつぶされて私は……それに気づきさえしなかった。 女は結婚しなきゃいけない、気持ちの悪い風潮だ。 どうしてまた私たちの幸せを奪おうとするんだ。 だから、私たちは結婚することにした。 好きでもない相手と挙げる結婚式だ。 始めてその男を家に連れて行ったとき母親はどれだけ喜んだことか。 ああ、そんなに異性って奴がいいか。普通ってやつはそんなに大層なものか。 だから私たちは結婚する。 結局どこに行っても逃げられなかった世間様に押しつぶされて、同じように苦しんでいた男同士。 会場は幸せな空気と祝福に包まれてまるで夢の世界にでもいるみたいだ。 今日、違う場所でまた同じようにしているんだろう。 神父様は言った。 汝(なんじ)健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか? 「はい、誓います。」 では、誓いのキスをと最後の言葉が落とされる。 ああ、ほんとうに ほんとうに 反吐が出る
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