犠牲者1 雪森麗華

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もうどうだっていい。言うんだ、わたし。 「今日の粋恋……昨日と全然違ってて 怖かった。」 「こわかった……?」 粋恋は、まだ悪魔の顔だ。 「うん。和ちゃんと話している時、粋恋 怖い顔をしてた……。それに、わたし 和ちゃんと仲良くなりたかったのに、粋恋が 麗華は人見知りだからあんまり話さないでね、 とか和ちゃんに言うから……。わたし、 和ちゃんに絶対嫌われた……!!」 わたしは一か八かの思いで言った。 精一杯言ったこの思い、粋恋に 伝わったかな……? わたしは恐る恐る目を見開き、粋恋を 上目遣いで見つめた。 「……そうだったんだ。」 粋恋は、なんといつもの顔に戻っていた。 眉を吊り下げ、悲しそうな表情だ。 よかった……伝わったのかな。 わたしはホッと胸を撫で下ろす。すると 粋恋は目に涙を浮かべ、私の腕に 抱きついた。 「ごめんね麗華。麗華はそれが嫌だったんだね。 気がつかなくてごめんね。麗華……。」 「うん、いいよ別に。」 わたしは、そっと粋恋の頭を撫でる。 よかった伝わって。これで、粋恋はもう悪魔に からないかな……。 あの悪魔の粋恋は、幻だったのかもしれない。 「粋恋、だからこれからは私が人見知りだから ってあういうこと言わなくていいからね。」 「やだ。」
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